ユニバーサルデザインの歴史と考え方

今、なぜユニバーサルデザインなのか

ユニバーサルデザインは、年齢や心身の能力、使用環境にかかわらず、「できるだけ誰にでも使いやすいデザイン」をめざす考え方です。

21世紀に入って、わが国が本格的な少子高齢社会を迎える今、これまで見過ごされてきた、さまざまな環境・製品・サービスなどにおける「使いにくさ」が次々と指摘されつつあります。こうした社会情勢のもと、いま注目を集めてきているのが、ユニバーサルデザインの考え方なのです。

イメージ図:幅広い年齢の、様々なからだやこころをもつ人々

人間社会とデザインの意味

私たちが生み出してきた「人工物」──街や住居、生活用品、サービスやコミュニケーションには、今、さまざまな問題が露呈しつつあります。ひとつは地球環境や人間以外の生命体に及ぼす悪影響。もうひとつは、自分たちの生み出してきた「人工物」に、私たち自身が適応できなくなりつつあるという問題です。

私たちは、朝起きてから夜寝るまで人工物に囲まれ、常に誰かのデザインの影響を受けて生活しています。その中で問題になってくるのが、「デザインという環境」への不適応なのです。デザインという環境への不適応は、使う人の心理に「ストレス」や「パニック」を引き起こし、病気や事故につながります。どんなデザインも多かれ少なかれ欠陥や問題をはらんでおり、それが「デザインという環境への不適応」を引き起こすという認識は、私たちがものづくりにとり組んでいく上で忘れてはならないことです。

高齢社会とユニバーサルデザイン

わが国はいま、本格的な高齢化を迎えつつありますが。人間の身体能力には、年とともにさまざまな変化がおとずれます。その中で、今までのような、漠然と「若くて健康な人々」に向けてデザインされた製品は、ますます使いにくくなっていきます。また精神的活動はますます成熟していくため、より「使いやすく、ここちよいデザイン」への要求は大きくなる一方です。

グラフ:我が国における年齢別人口の推移と将来推計

こうした状況下で、ユニバーサルデザインをモノづくりに取り入れることがますます重要になってきているのです。

加齢による一般障害
  1. 知覚能力の変移(Sensory Change)

    聞こえにくい/話しにくい/見えにくい/感じにくい

  2. 移動能力の低下(Dismobility)

    歩きにくい/座りにくく立ちにくい/早く反応できない

  3. 平衡と落下(Balance & Falling)

    倒れやすい/バランスを失いやすい

  4. 記憶と混乱(Memory & Confusing)

    覚えにくく忘れやすい/混乱しやすい

ユニバーサルデザインとバリアフリーデザイン

バリアフリーデザインとは、すでにある製品やサービス、施設などが「使いづらい、使うことができない」というバリア(障壁)を取り除くという考え方です。これはいわば、ある製品やサービスが「使いづらい」あるいは「使うことができない」人々のための、「問題解決型」のデザインです。

一方、ユニバーサルデザインは、あらかじめ多様な使い手の身体的能力や心理、使用環境などを想定してデザインする「創造的提案型」のデザインです。また、物理的・身体的な使い勝手だけでなく、心理的にも「使いたい」「使いやすそう」という気持ちをひき出す、「身体にも心にも快適」という意識も含まれています。

ユニバーサルデザインの「創造的提案」と、バリアフリーの「問題提起・問題解決」とは、いわば川の両岸にあたる考え方ですが、両方とも今後の社会の中で必要なデザインの考え方であるといえます。

バリアフリーデザイン

その問題提起(告発)の是正<最低限の保証>

バリアフリーデザインとは、人々の暮らしや社会行動の中での「障害」を感じたものに対する問題提起(告発)である。

ユニバーサルデザイン

創造的解決

ユニバーサルデザインとは、問題提起(告発)の存在とともに、それらを契機にした全く新しいデザインの母体を考える態度である。


ユニバーサルデザインの歴史的背景

ユニバーサルデザインの考え方は最初、1990年代初頭、米国で社会的にも話題となった「ADA法(The Americans with Disability Act:障害を持つアメリカ人法)」の議会通過を契機に起きてきたものです。

その提起の中心となったのは、建築家であった故ロナルド・メイス氏らの、ノースカロライナ州立大学センター・フォー・ユニバーサル・デザイン(CUD)でした。

この考え方の中核となるのはユニバーサルデザインの7つの原則で、それぞれの原則に3〜4つのガイドラインが付けられており、環境や製品、サービスなどにおいてユニバーサルデザインを取り入れる上でのヒントが盛り込まれています。

ADA法の手引き、ロナルド・メイス氏(故人)、CUDのブロッシュア(資料提供:センター・フォー・ユニバーサル・デザイン)

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